台湾サブカル探訪

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百合花 / 燒金蕉 Burnana 台湾インディーズ名盤

本日は3ピースロックバンド・百合花の1st Album【燒金蕉】についてです。
台湾の伝統楽器及び戯曲の歌唱や南北菅の音楽理論を取り入れ、2019年~2020年に大絶賛された台湾語のアルバムです。

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燒金蕉 Burnana

1. 緊中冷
2. 𨑨迌
3. 草山落大雪
4. 早知莫投胎
5. 燒金蕉
6. 哎喲你啊
7. 醫生
8. 跤麻麻
9. 怨妒
10. 藝術家
11. 逐家攏仝款
12. 一枝草
 

■百合花とは

2013年にGt.Voの林奕碩が顏伯聖(現・肥飽豬)と嚴文康(現・害喜喜)の3人で台湾語の曲を作り始めたことを期に、バンド活動を開始。
同時に林奕碩は台湾の伝統音楽である南管の音楽理論を学び始め、伝統音楽演者に師事、以降楽曲に台湾伝統音楽や60-70年代台湾語歌謡の要素を取り入れていきます。

林奕碩・顏伯聖・嚴文康時代のDEMO

顏伯聖と嚴文康との活動はすぐに終わってしまいましたが、2014年に大学の後輩の邱莉舒(Dr)が加入し改めて活動を開始、何度かメンバーチェンジを経て当時の高校生だった林威佐(Ba)が加入し現在のメンバーが揃い、同年にはアルバムタイトル曲である【燒金蕉】を完成させています。

2013年の燒金蕉DEMO、編曲に粗さはありますが、ほぼ今と変わりません

2018年度には台湾政府文化部の補助金を獲得(台湾ではインディーズバンドの音源制作に補助金制度がある)、伝統楽器をふんだんに用いたアルバム【燒金蕉 Burnana】を制作・発表。

例えば、1曲目の緊中冷
冒頭に北鼓+通鼓(小太鼓)と銅鑼/響盞の音が鳴り始めてから歌仔戯(台湾の京劇)のような歌唱が入り、全編を通して鼓吹(チャルメラ)と笛の音がアレンジされています。
こうした伝統楽器や伝統音楽の音階を取り入れた楽曲が絶賛され、様々な音楽賞を受賞すると同時に、大きく知名度を上げ、一躍人気のバンドとなりました。

但し、伝統楽器や北南管の音階を取り入れたただけなら、

先日紹介した飛鴻と変わらないじゃん?

と思われるかもしれません。

飛鴻 Faye Hong / 少年仔 ~伝統音楽との融合~ - 台湾サブカル探訪

 

林奕碩自身、百合花は下記の要素を含むと定義しています。
 -搖滾、藍調常見的音階、和弦以及節奏型態 (ROCK,BLUESの音階)
 -爵士常用的非對稱節拍以及變拍(5/4、7/8)(JAZZの変拍子)
 -北管鑼鼓詩、裝飾性節奏插花仔
 -北管嗩吶(鼓吹)的反覆旋律入弄
 -南管嗩吶(噯仔)演奏傳統選段風打梨
 -北管戲曲裡面齊奏的絲竹樂 参考
 -印尼峇里島克差舞的口唱節奏(Kecak)(インドネシアの原住民音楽)
 -R&B與搖滾的歌唱技巧 (R&BとROCKの歌唱技巧)
 -客家山歌、台灣閩南語歌謠的四度轉音客家歌・台湾語歌謡)
 -漢文化大江南北戲曲常見的生/旦假嗓 
 -日本演歌的歌唱技巧 (演歌の歌唱技巧)

 飛鴻と同じく台湾伝統音楽の要素ばかり注目されがちですが、林奕碩自身はJAZZや台湾語歌謡、演歌の要素も名言しています。

 それ以前に彼らはベースとなるサウンドは、70年代初期の叙情プログレッシブロックやアシッドフォーク的な要素が強く、音作りは初期YESの影響を感じます。

 そこに台湾語歌謡的メロディと林奕碩の絶唱、邱莉舒のJazz Funk的なリズムと林威佐のうねるベースのグルーヴが折り重なり、飛鴻とは異なる音楽性のロックバンドであることが聴いて取れます。

(直接的な影響は無いと思いますがコスモスファクトリ―を彷彿させます。)

 また、彼らは3ピースバンドなので、実際のライブではアルバム同様の伝統楽器を用いることはできませんが(林奕碩が笛と銅鑼を用いるくらい)、何の不足も感じさせないライブを行っています。

【伝統音楽】というフィルターを通さなくても、優れたロックバンドですね。

日本の演歌でいうところのブルースを取り込んだ名曲【藝術家】

 残念ながら2020年に、紅一点ドラマー・邱莉舒と、アルバム発売後に加入したギタリスト・劉棕予が脱退してしまいましたが、それでもライブ活動を継続しており、次作の作成にも取り組んでいるとのことです。

台湾が誇る実力派ロックバンドですので、今後は国外でも活躍も期待しています。

燒金蕉

燒金蕉

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